【プロLIVE】片岡照博(デザイナー)デザインとは楽しく生きていくこと、そのものである
もくじ
経営者や活動家、クリエイターなどさまざまな分野で活躍するプロフェッショナルたちが毎月登場する、SOZOWのプロLIVE。
仕事内容だけではなく、仕事との出会いと情熱、困難の乗り越え方など、プロフェッショナルたちの頭の中を大公開。
子どもたちにとっては、気になることを直接質問することで、未知の世界に接触する機会になります。
今回登場いただいたのは、世界をカラフルにする仕事【プロデザイナー】。
私たちの日常のさまざまなシーンで見かける「デザイン」という言葉。
ファッションデザインやグラフィックデザインといったモノのデザインは当然として、建築や内装を総合的にデザインする「空間デザイン」。そして企業と顧客との関係という、目には見えないものまでもデザインする「コミュニケーションデザイン」という考え方まで、デザインという言葉は多岐にわたる分野で見かけます。
そもそも「デザイン」とはどういう行為で、なぜ私たちの生活に必要なのでしょうか。言葉としてはよく使っているけれど、改めて言葉の意味を深く考えてみると少し具体的イメージが掴みにくいと感じるかもしれません。
そんな興味深いテーマに答えてくれるのは、SOZOWのロゴデザインも手がけた片岡照博さん。身近なデザイン事例をたくさんご紹介いただきながら、デザイナーという仕事の魅力やその背後にある思考に迫っていきたいと思います。
登壇者紹介
さっちゃん:
SOZOWガイド。笑顔でアクティビティを盛り上げます!
デザイナーの仕事とは?プロのお仕事をみてみよう
デザインの仕事は、私たちの生活のどんなところで生かされているのでしょうか。片岡さんが関わってきたさまざまなお仕事をご紹介いただき、デザインと私たちの生活のつながりを発見してみました。
片岡さん、よろしくお願いします!
早速ですが、デザイナーというのは一言でいうとどんなお仕事なのか教えてください。
ぼくは、デザイナーとは「デザインで課題を解決する人」だと考えています。
もっとわかりやすくいうと、社会の中にある「こうだったらいいな」ということを見つけて、より良く変えていくことです。
「デザイナー」と聞くと、おしゃれに関する仕事というイメージがありますが…
おしゃれも大事な解決方法ですが、あくまでも手段の一つで、デザインはおしゃれに関わることだけではないのです。
なるほど!それでは実際に片岡さんがどんなデザインをしてきたのか、ご紹介いただけますか。
まずはこちらです。実は…SOZOWのロゴマークや、SOZOW Fesのウェブサイトのデザインを担当しました。
そうだったのですね!参加してくれているみんなからも、コメント欄で驚きの声が寄せられています。
こちらはオフィスのインテリア(画像左上)や、ホテルのインテリア(画像中央上)、それからペンケース(画像右上)などの例です。いろいろなものをデザインしていますよ。
カラフルなものが多いですね!
はい、色が大好きなんです。
こちらは函館空港内の観光案内所をデザインした時の写真です。
ここ(画像上段左から2番目)に色画用紙を持っていますが、これは函館の街にある建物の色を測っているところです。街の建物の色を空港内のデザインに使いたかったからです。
また、グラフィック(画像下段中央)や空間(画像下段右)には、函館名物である塩辛から測った色を使いました。
ロゴからグラフィック、建物までいろいろなデザインのお仕事に関わっているのですね!
「デザイン」は、なんのためにあるのか
「デザイン」の存在意義とそれが私たちが生活する中でどのように必要とされてきたのかを、身の回りにあるデザインの例を通して探っていきます。
片岡さんの活動の幅が広くて少し混乱してきてしまいました…。片岡さん、「デザイン」とは、いったいなんなのでしょう….?
デザインとは、「うまくいかないものを、うまくいくようにすること」だとぼくは思っています。
たとえばこちらの画像をご覧ください。
こちらの右側のUSB。これはぼくが個人的に「よくないな」と感じているデザインの一例なのですが、参加しているみんなは、なにがよくないと思いますか?
裏表がわかりにくい。
まさにそうなんです。ぼく自身も何回、差し間違ったことか…。
こういう「よくないデザイン」は「人を迷わせるデザイン」なのです。
では逆に「いいデザイン」とはなんでしょうか?
同じ画像の左側をご覧ください。タイプCというUSBなのですが、このデザインであれば裏表が一緒になっていてどう差し込んでも大丈夫ですよね。これは多くの人の悩みを解決した、いいデザインだと思います。
なるほど、わかりやすいですね!
ところで、デザインという考え方はいつ頃からあったのでしょうか?
デザインは人の歴史とともにあります。古くは石器時代の石器や、その後に登場した土器を作るのだってデザインと言えるでしょう。
前々からあったものでも、デザインが変わることで便利になっていく例をペットボトルでご紹介しましょう。
ペットボトルが登場した時は画像左側のようにつるんとした形でした。それが滑らないように画像右側のような形に進化しました。これがデザインの力です。
ペットボトルというもの自体はずっと前からあったけれども、日々時代の変化に合わせてデザインが進化してきているのですね。
はい。社会とともに日々デザインは変わってきています。
今度は建物で、デザインの目的が変わってきた例をご紹介しましょう。
たとえば、こちらの白川郷(画像)は江戸時代中期に建てられた建物ですが、屋根の形にデザインが生かされています。
屋根に傾斜をつけて雪が積もりにくくし、家が雪で潰れないようにして生活を守ることがデザインの目的だったんですね。
今度は最新の建築に関するデザインの考え方をみてみましょう。
これは木を用いて超高層ビルを建築しようという、新しいデザインのチャレンジです。
白川郷のように今ある課題を解決していくだけではなく、環境への優しさも考慮していくといったように、デザインにできることはどんどんバージョンアップしていくんですね。
※ペットボトルの登場は、1974年アメリカの企業が飲料用として採用したことが始まりと言われており、日本では1977年から醤油の容器として流通されるようになりました。
※白川郷とは、岐阜県内の庄川流域の呼称で、1995年に合掌造り集落としてユネスコの世界文化遺産に登録されました。日本屈指の豪雪地帯としても有名で、2m以上の積雪を記録することもあります。
デザインにできることが、どんどん広がっていきますね。
デザインはさまざまなところで必要とされているので、「デザイナー」と言ってもたくさんの種類があります。
こちら(画像)で紹介した以外にも、「Webデザイナー」「ファッションデザイナー」「グラフィックデザイナー」「インテリアデザイナー」「UI/UXデザイナー」「3DCGデザイナー」などがあります。
参加してくれているみんなが大きくなる頃には、新しいデザインの仕事もできているかもしれませんよ。
楽しみですね!
※UI/UXとは、UX(ユーザーエクスペリエンス)とは、ユーザーがwebサービスやアプリケーションを通して得られた体験を表す言葉。UX(ユーザーインターフェース)とは、ユーザーが操作する画面やタッチ画面など、ユーザーがサービスを利用するときに目に触れるものをさします。
プロのこだわり。ロゴデザインに込める“想い”とは
デザインというと“ひらめき”“センス”というイメージが先行するかもしれませんが、片岡さんはどういう視点でデザインを完成させていくのでしょうか。ロゴデザインを例に、プロのこだわりをご紹介いただきました。
片岡さんはSOZOWのロゴをデザインされていますが、どういうことを考えているのでしょうか?
ロゴを作る時は、ロゴにどういう想いをこめるかが大事なのです。
たとえば、こちらのAmazonのロゴマーク。どんな意味があるのでしょうか?参加している皆さんに聞いてみたいと思います。
AからZまで!
そうですね。Amazonは、なんでもそろうサービスです。それを、「アルファベットのAからZまで」という矢印で表現しています。
SOZOWのロゴにはどんな意味が込められているのでしょうか?
こちらの画像の緑の線をみてください。SとZとWが、デザインの中に隠れているのがわかりますか?
また、SOZOWに参加するみんなには自由に発想をしてほしいという思いで、イナズマのイメージも込めました。羽ばたいてほしいという願いで、プロペラもイメージしています。他にもいろいろな要素が込められているんですよ。
いろいろな想いが込められているのですね!
はい。ロゴにはメッセージを伝える力があるのです。
片岡さんがデザイナーになったきっかけ
幅広いジャンルで活躍する片岡さん。子ども時代からデザインセンスにあふれる子どもだったのでしょうか?片岡さんがデザインの仕事に夢中になったきっかけを探ります。
片岡さんは、いつからデザインに興味を持ったのでしょうか?
実は「いつから」というのはあまり覚えていないんです(笑)。ですので、自分が今日参加してくれているみんなと同じ年齢の頃から、なにをしてきたのかを整理してきました。
まず、小中学生のころは外で遊んでいました。
高校生の頃は散歩したり、雑貨屋を見て回ったり。それから、針金細工を作って友だちに販売していました。この針金細工がデザインの始まりだったかもしれません。
大学では、建築や都市デザインというまちづくりの勉強をしました。
大人になってから、そこにインテリアやウェブが加わって活動の幅が広がり、今に至ります。
なぜデザインに興味を持ったのでしょうか?
ぼくね、「楽して生きたい」というのが学生時代にずっとあったのです(笑)。
学生時代に課題をこなすために時には徹夜をするんですよね。そういう時に「楽したいな…」って考えていたら、ふと気がついたことがあるんです。それがこちら(画像)です。
徹夜って辛いんだけど、いろいろ考えていると楽しい。楽しいと、結局楽に感じるんですよ。
楽しんでやっていたらあっという間に時間が過ぎる。
社会って大変なことだらけですよね。でも、くさらないで楽しい方に持っていくというのが大事なのです。
問題や課題も、楽しいことと結びつけながら解決していけばいいのだということに気がついたんですよ。
…あれ、それってもしかして…?
そうです。まさに最初にご紹介したデザインの考え方なんです!
楽しく生きていくことが、デザインそのものなのです。
子どもたちが片岡さんに聞きたいこと
片岡さんのお話を聞いて、「ファッションデザイナーになりたい!」と将来を具体的に思い描くことができた参加者もいたようです。デザイナーという仕事に対する質問が続々寄せられました!
デザイナーになることは、どれくらい難しいのですか?
簡単です!
デザイナーは免許や資格がいらないので、自分でデザイナーだと宣言すれば誰でもデザイナーです。たとえば、自分で作ったものを売ればもうデザイナーになっている。誰かに認めてもらう必要はありません。メルカリなど、売る場所はいろいろありますよね。ハードルはとても低いんですよ。
国語や算数、社会といった学校の勉強が苦痛です。やらずに大人になるのはアリでしょうか?
ありなのですが、いずれ必要にはなってくるでしょう。
たとえば算数。仕事をしているとお金の計算ができないと生活できないですよね。国語は、自分で考えたことを伝えるために必要になってくる。
大人になってから勉強するのでもいいけれど、子どもの時のほうが頭は柔らかいので、できるなら子どもの時にやっておいた方が楽だとは思います。
どうしたらデザインのお仕事ができるんですか?
うーん…やっちゃえばいいんですよ(笑)。
ぼくは自分の名刺づくりから始めました。100回くらい作り直ししたと思います。それを見せて、友だちに「名刺作らない?」と声をかけていき、それがデザイナーの仕事につながっていきました。
まずはやりたいところからはじめてみるのがいいと思います。
片岡さんから子どもたちへメッセージ
最後に片岡さんから本日参加してくれたみんなに向けて、シンプルだからこそ心にずっと刻まれるメッセージをいただきました!
ぼくからのメッセージは1つだけです!
好奇心を持ち続けて、大切に育てていってほしい。
たとえばゲームが好きだったら、今度は自分が作る側に回ってみる。そうやって自分の好奇心を膨らませていけば、世界は素晴らしいものになると思っています。
まとめ
昭和の教育を受けた保護者世代には、好きなことをやりたかったら辛いことも我慢するべきという考え方が根強く残っているでしょう。
しかしそんな考え方とは異なる「辛いことも楽しい方向に持っていく」という片岡さんの言葉に、今日参加してくれた子どもたちの多くが共感し、勇気をもらったようです。チャットでは「好きなことを仕事にするって、自由、楽しい、楽に繋がっていくんだ!」「好奇心を大切にしたくなった」とポジティブなコメントが続々と寄せられました。
自分自身の人生を楽しい方向に持っていくこと。まさに一人一人が自分の人生のデザイナーなのですね!
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聞くだけではなく、参加できることを大切にしているプロLIVE。
子どもたちからの質問にプロが直接答えてくれるかもしれないQAコーナーや、プロのお仕事の入り口を体験できるプチワークショップコーナーもあります。
SOZOWのプロLIVE、今後もお楽しみに!
過去のプロLIVE記事は<こちら>をご覧ください。
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(ライター:まつだしなこ)