【保護者セミナー】今村健一(ミネルバ大学講師)未来クリエイターを育てる「問い」の力(対談編)
子どもの好奇心と未来の可能性を解き放つ、親子向けのオンラインイベント「SOZOW FES」(2023年1月22日〜3月12日開催)。
子どもたちが未来をSOZOWできるライブセッションやワークショップが目白押しでしたが、2月23日には「新時代の教育・子育て」をテーマに保護者向けのセッションも開催しました!
変化が激しく、正解のない時代。一方で、どんな時代でも変わらないのは「子どもには幸せになってほしい」という親の願いですよね。
SOZOW FESの保護者向けセッションでは、各分野の子育てスペシャリスト達との対談を通し、「幸せな未来を作る力を作る力を育む教育とはなにか」について参加された保護者の皆さんと一緒に考えていきます。
今回のテーマは「子どもが未来クリエイターとなる新しい教育とは!?」
未来クリエイターとは、自分自身の未来を主体的に生み出す力をもった子どもたちのこと。今ある職業の半分がなくなるといわれる時代に、必要な力です。
未来を切り開く主体性を育てるには、どんな教育が必要なのでしょうか。
その答えを、子どもの教育から社会人の教育・学びのトレンドに視点を変えて探っていきます。
米国・ミネルバ大学の社会人向けプログラムの講師を務める今村健一さんと、SOZOWの代表で過去には人事責任者として採用・人材開発を担ってきた小助川wが対談し、全ての人に求められる未来を切り開く力の育て方について深く掘り下げました。
このセッションを通じて、新時代の教育・子育てのヒントが見つかることを願っています。
※ミネルバ大学とは、アメリカ合衆国サンフランシスコに本拠地を置く総合私立大学。世界最先端の大学と言われる革新的な教育方法に世界各国から注目が集まり、世界最難関大学の一つとなっている。
登壇者紹介
今村 健一(以下、今村)
東京大学を卒業後、株式会社リクルートでの人事を経て、多国籍な従業員が在籍する企業のHRとして海外で経験を積み、2021年より多様な企業を傘下にもつZホールディングス株式会社にて執行役員人事統括部長就任。人材開発の経験を活かし、ミネルバ大学にてリーダーシップ研修の講師としても活躍。
小助川 将(以下、小助川)
SOZOW株式会社 代表取締役。慶應義塾大学卒業後、戦略コンサルティング会社へ入社。上場企業での人事採用責任者を経て、2019年Go Visions株式会社(2022年11月にSOZOW株式会社へ社名変更)を創業。二児の父で、長男は最年少でWorld Robot Olympiad世界7位入賞し、現在は孫正義育英財団3期生としてシンガポールの中学へ進学。長女は小学校の時「学校行きたくない」問題に直面した。高1からネットの高校「N高」に進学。
※N高とは、日本の私立通信制高等学校。正式名称はN高等学校。沖縄県うるま市に本校を置き、全国にキャンパスを有する。
社会人の教育・学びのトレンドは?
ー人材教育に長年関わってきた今村さんに、今の社会人を取り巻く環境についてお話を伺いたいと思います。
私が人材教育に関わり感じたことをまとめると、スライド(画像)に記載した「答えがない」「複雑に」「変化が速い」の3つに集約されます。
まず、「答えがない」ということは、ビジネスにおいても人材教育においても共通のトレンドです。どの選択肢が正解なのか、明確にわかることはほとんどありません。
さらに、「複雑になっている」という意味は、さまざまな視点からの検討が必要になったということです。テクノロジーの進化によってユーザー視点としては生活が便利になりましたが、事業環境は複雑性が増しています。
そして、「変化が速い」。
時代の変化が速いので、世代によって育った環境が大きく異なり価値観も違ってくる。企業は価値観もカルチャーも違うメンバーをマネジメントしていく必要があるでしょう。
ー環境の変化に対して、社会人の皆さん自身にも変化があるのでしょうか。
答えもないし、後ろから”変化”が追いかけてくるので、考える前にまずやってみようという傾向がみられます。
次に、個人や一部署で完結する業務が減少していると感じます。反対に、周りの人と一緒にやることの方が重要視されている。
3つ目が共感と発信。これは二つセットです。まず周りの人の考えに共感したうえで、自分の考えを発信することまでが一連の流れとして必要です。
私も同感です。
(過去に)新卒採用を担当していたとき、提示された課題にはしっかり取り組むことができるものの、自分の考えを発信し行動を起こすことは苦手な人たちが多かった印象です。学校教育の中では、目的に沿いながら自分で考えて人を巻き込んでいく経験が少なかったのかもしれません。
そういう人は、あくまでも印象論ですが、自分と意見が違う存在を”敵”と見なしてしまいがちです。
しかし、違う意見にも理由はあります。それを理解していれば、今村さんがおっしゃったとおり相手に共感したり、異なる意見とも着地点を見つけることができるでしょう。
正解がない状態で、自分で考えて動くという経験は大事ですよね。
※株式会社LITALICOとは、「障害のない社会をつくる」をビジョンに掲げ、就労支援や幼児教育・学習塾などの教育サービスを提供する企業。公式HPはこちら>>
海外との比較をご紹介します。
ブランコの順番待ちをしている場合、日本だと並んでいればいつかは順番を譲ってくれます。一方オランダは自分で「あと何回で交代」とルールを提案し自己主張しないと、譲ってくれません。
つまり、日本人は共感力は強いですが、発信力は弱いんですね。
日本の子どもは、我慢をする習慣があると思います。「人に迷惑をかけるな」と言われて育っているので、自分にブレーキをかけちゃうこともあるかもしれませんね。
ー社会人を取り巻くトレンドに対して、活躍しているタイプ、苦労しているタイプというのはどういう人なのでしょうか?
与えられた問題を解くことが得意な人ほど、苦労しています。
子どもの時に、追いかけっこのルールを自分で決める子。どこかに行ってみよう、これやってみようと言い出す子。成績よりも、そういう主体性がある子ども時代を過ごした人が伸びると教育の現場で実感しています。
今村さんのおっしゃった主体性に加えて、自分自身のことを理解しているというのも大事だと思います。
ゼロから物事を生み出すのが得意な人もいれば、すでにある課題を改善することが好きな人もいるでしょう。自分の得意、不得意を理解し、それにマッチする環境で働いている人が力を発揮しています。
そして自己理解は、環境を変えて経験を増やしていかないと深まらないのです。年齢を重ねているかどうかは関係ないと思います。
また、さらに挙げるとすれば”目的と手段を分けて考えられる”人。
過去から続く手段にこだわらずに、未来の目的のために手段を見つめ直せる人は、大きな変革でリーダーシップを発揮できます。
それはとても重要な観点だと思います。いつの間にか手段が目的化することが多いので注意したいところです。
ー子どもの宿題にも同じことが言えませんか。学習の手段であるはずの宿題をこなすことが目的になっていた社会人は、今のトレンドとのギャップに苦しむかもしれないですね。
確かにそうですね。宿題をこなすことも素晴らしい面もありますが、時々「なぜやるのか」という目的を見直してきた人が伸びていると感じます。
そもそも「子どもの教育は何のためにあるのか」という目的を問い直すことも重要ですよね。
世界最先端の「ミネルバ大学」から考える未来の学びとは?
ー世界最先端と言われるミネルバ大学で行われる教育がどんな内容か教えてください。
ミネルバ大学は、世界で一番イノベイティブな大学といわれています。同じランキングでは、10位がハーバード、京都大学で43位、東京大学で53位なんですね。
ミネルバ大学の理念は、複雑な世界におけるリーダーシップをとれる人材を育てることです。
ここでいうリーダーシップとは「未来」を「みんなで」作っていける人のことであり、未来クリエイターに近い考えだと思います。
※Global Top 100 Innovative Universities ランキングはこちら>>
講義はすべてオンラインで行われます。特定のキャンパスはなく、大学4年間で世界7都市を周り、滞在する各国で起きている社会課題を現地企業やNPOと一緒に解決するためのプロジェクトに参加します。
そこで学んだことを、授業に持ってきます。授業といっても、先生が話していい時間は全体の15%までと決まっていて、生徒は授業の前に主体的に学び、その学びの成果をみんなで共有するのが授業という「反転学習」というスタイルが徹底されていることが特徴なので、生徒の方が時間をとって喋らなくてはなりません。
※反転学習とは、従来の授業で学んだ内容を宿題で復習するという学習手順を逆転させ、自宅などで自分で学習してから授業に臨み、授業では演習や応用を実践するという学習方法。
実は…SOZOWが大事にする子どもの主体性を尊重した学習方法も、ミネルバ大学を参考にしています。
一番特徴的なのは、4年間のうち1年目はリーダーシップしか学びません。専門的に分かれて学び始めるのは2年生から。それだけリーダーシップを育成することにこだわっているのがわかります。
社会人になってもリーダーシップ教育の需要は高く、ミネルバ大学は社会人向けにManaging Complexityというプログラムを作りました。複雑性をどうマネジメントするかということを3ヶ月かけて学びます。
システム思考やデザイン思考という18の要素を体得していくのですが、要は「立ち止まって考える力」に集約されると思います。
※今村さんが講師を務めるManaging Complexityプログラムの詳細はこちら>>
※システム思考とは、課題を「システム」として捉え、多面的な視点で原因を探り問題解決を目指すという思考方法のこと。
※デザイン思考とは、ユーザーの潜在的なニーズを追求するため、ユーザーに共感しながら課題解決を目指す思考方法のこと。
ー冒頭にお話しいただいた「まず、やってみる」重要性と矛盾しませんか?
最初の一歩を踏み出す時に「どっちに踏み出せば良いんだっけ」ということを考えられる力をここで教わります。
システム思考を例にとって考えてみましょう。世の中の課題を要素に分解して考える時、一部の要素しか見えていないと課題設定を見誤ってしまい、最初の一歩が正しく踏み出せない。
まずは立ち止まって課題を俯瞰して見て、どちらに踏み出したら良いのかを瞬時に判断する力を養います。
このシステム思考の授業を小学生に実施したことがあります。
交通渋滞の写真を見せて、この渋滞が起きる要素を分解してみてくださいと提示しました。
すると、ある小学生が「その街に新幹線や空港があるかどうかは重要だ」と言ったんです。これは写真に写っていること以外の要素も、俯瞰してみているということです。
物事を俯瞰してみる力は、子どもでも持っていることがわかりますね。
ーそういう思考ができる人とそうでない人の差はどうやって生まれていくのでしょうか?
もともとの力はそこまで差はありません。
周囲の大人がどう接していたかや、先生がどういう問いかけをしていたかが後天的に大事だと思っています。
たとえば、子どもから「なんで宿題ってあるの?」と聞かれた時に、「なんでだと思う?」と問いかける。
そんな細かい対話の積み上げでしかないと思います。
私も同意です。
問いかけて、疑問を持つきっかけを作ることが重要だと感じています。
ー先生や保護者がどういう関わりをすれば、子どもたちに未来クリエイトの力がつくのでしょうか。
僕は「手段は教えず、質問しかしない」というスタンスです。
実際に私が体験した例を用いて詳しくご紹介します。
メタバースの校舎で生徒同士が言い争いになったという相談を受けました。こういう場合に保護者がやりがちなのが「こうしなさい」と手段を子どもに示すことですね。
でもまずは「どうしたの?」と事実を確認してから、「喧嘩をした相手の子と今後どういう関係になりたいの?」と問いかけ、子どもの答えを待ちます。
子どもから回答が返ってきたら、「そのためにはどうしたらいいと思う?」とさらに質問を繰り返します。
一つの視点にのめり込むようなら、「他のお友達の力も借りられるかな?」と視点を広げるような問いかけもいいでしょう。
そうやって質問されることで自ら気づき、問題を解決できた子は、再び同様の問題に直面した時に自力で解決できるようになります。
”問いかけの質”をあげるには、「この人はどういう感情でいるのか」を意識・想像すると良いと思います。子どもに対しても、大人に対しても同じです。
冒頭の”共感”の話にも繋がりますね。
たとえば怒っている相手に対して「怒っている」という表面的な要素だけを見るのではなく、深く感情を意識してみると、怒っている本質的な理由が心配や不安など他にあることが見えてきます。そうすると相手への問いかけの質が変わってくるでしょう。
これが共感力のトレーニングにもなるのです。
日常とは違う体験をして視野を広げるということも、親子でできることの一つですね。
海外旅行やキャンプ、電車で数駅離れた街に行くだけでもいいと思います。そこで「今住んでいるところと違う世界があるよね」という何気ない会話を持つだけで、社会を違う視点で考えるきっかけになります。
社員の評価でよく使われる「ポテンシャル(潜在能力)」という視点は、複数の層から成り立っています。
一番のベースが好奇心があるかなんですよね。二層目がその人が持っているバリュー(価値観)。三層目にようやくスキルがきます。
小助川さんがおっしゃった、今までとは違う経験をすることは、バリューの部分に影響を与えます。バリューに刺激が届くと、核である「好奇心」がくすぐられますよね。この好奇心が強い人が「ポテンシャルがある」人ということになります。
知識やスキルの取得を先行させても、好奇心が働かないと結局思うような成果は出せないのかもしれないですね。
子どもの教育や親の関わり方で大事なことは?
ー子どもの視野を広げ、好奇心を育てるためには、保護者はどんなサポートをすべきでしょうか。
このスライド(画像)で紹介する3つの問いを実践してみてください。
「どうしたの?」と尋ね、子どもの言葉で状況説明をさせることが大事です。仕事でも自分で状況を正確に理解し、人に説明することは必要な能力ですよね。
次に「どうしたいの?」という問いを投げかけます。これは主体性を育むための問いです。保護者はアドバイスをしたい気持ちをグッと堪え、問いかけに徹しましょう。
3つめの「何か手伝えることある?」は、一人でどうしようもない時でも周りに人がいるんだよ、と視野を広げるための問いかけになります。
完全に同意です。
未来クリエイターに必要な力は、自分自身が実現したい未来に主体的に進んでいく、そのために周りの人の力も借りられる能力なんですよね。
この3つの問いが大切なのは、大人に対しても同じです。
私が人事部を担当していた時、上司が一方的に評価することでどんどん悪くなっていく組織を少なくない数、みてきました。その一方で、上司が部下に問いかけをしてサポートできることを一緒に探していくような組織は成長していきます。
子育てだけではなく大人同士でも、問いかけを丁寧に行うことで解決できる問題はたくさんあるのです。
ぜひこの3つの問いをし続けてみてください。
子どもも大人も、未来を自分で決めて切り開いていかなくてはならない。つまり、自分の人生のリーダーであることが必要なんです。
未来クリエイターとは、言い換えるとリーダーシップということです。
自分で考えて自分で行動する力を、問いを通して育てていきましょう。
まとめ
今回のセッションは、未来クリエイターを育てるための具体的なティップスが盛りだくさんでした!
「未来クリエイター」になるには、自分で答えを見つける主体性と、リーダーシップを発揮してみんなで未来を作る力が必要です。
その力を伸ばすために子どもとの会話で意識したいのが「3つの問い」。特別なトレーニングではなくとも、日常的な会話のアプローチを変えていくだけで子どもの主体性を伸ばしていけるというお話に、「今日から実践し習慣化したい」というコメントが保護者の方から続々寄せられました。
今村さんからは最後に「今日参加した全員で一歩を踏み出して、社会に良い効果を伝播していこう」と激励のメッセージをいただきました。ぜひ子どもへの問いかけを実践してみてくださいね。
今回のセッションが、少しでもみなさんの子育てのヒントになれば幸いです。
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(ライター:まつだしなこ)