これからの教育について考えたい

【 保護者セミナー】幸せな未来をつくる力を育む 「新時代の教育」小宮山利恵子さん(対談編)

こんにちは!SOZOW ライターのまーくんです。

2023年2月23日に「新時代の教育・子育て」をテーマにオンラインで開催された「SOZOW FES」。

今回は、株式会社リクルートスタディサプリ教育AI研究所所長の小宮山利恵子さんと、弊社代表の小助川による保護者セミナーの様子を紹介します。

登壇者紹介

小宮山利恵子(こみやま りえこ)

株式会社リクルートスタディサプリ教育AI研究所所長 東京学芸大学大学院教育学研究科准教授

早稲田大学大学院修了後、国会議員秘書になるも「すべての子どもたちに教育の機会を」という想いを胸に、教育領域へ従事。

その後、株式会社ベネッセコーポレーション、グリーを経て、2015年12月より現職。2019年度より東京学芸大学大学院准教授を兼務。

小助川 将(こすけがわ まさし)

SOZOW株式会社代表取締役

2003年慶應義塾大学卒業後、戦略コンサルティング会社へ入社。その後リクルート、グリー、LITALICOを経て、2019年6月Go Visions株式会社(現 SOZOW株式会社)を創業。

二児の父で、長男は最年少でWorld Robot Olympiad世界7位入賞し、現在はシンガポールの中学へ進学。長女はネットの高校「N高」に進学。

セミナー構成

今回の保護者セミナーでは、小宮山さんによるご講演(第一部)と弊社代表の小助川との対談(第二部)を行いました。

「どのような教育を子どもに届けたらいいのか?」

「これからの未来を生きる子どもの教育は何が大切なのか?」

教育に関するさまざまな問いに対して、専門家としてだけでなく、親としての知見を交えてたっぷりとお話していただきました!

理想の教育・子育てとは?

ー子どもたちがこれからの時代を幸せに生きていくには、どのような教育が理想的なのか。また、それに伴い受験や進路についてどのような意思決定をすればいいのかについてお二人の意見をお聞かせいただけますか?

受験や進路は、前提としていろんな選択肢があるという認識を持つことが大事だと思います。一般的な学校ではなく、通信制高校のN高*さんに通っている子もたくさんいます。

私の息子も当初は中学受験を考えていましたが、本人の特性に合わなかったので思い切って止めさせて、「中学受験するか、留学するかどっちがいい?」と聞いてみました。すると「留学したい!」と言われたので、海外に行かせました。

⋆N高等学校とは、日本の私立通信制高等学校である。略称はN高。沖縄県うるま市与那城伊計に本校を置き、全国にキャンパスを有する。

私の息子も中学受験の塾に通わせていましたが、精神的にどんどん疲弊していく姿を見て、「中学受験をするか、ロボットづくりに専念するかどっちがいい?」と聞いてみました。

元々、息子は寝食を忘れるほどロボットづくりに熱中していた子だったので、即「ロボットやる!」と言われました。笑

そのような選択肢を与えられたのも、小助川さん自身がものづくりを通じて得られる知見や恩恵を知っていたからですよね?

そうですね。

私自身もものづくりやテクノロジーには興味があるので、よく息子とロボットプログラミングのイベントにも参加したりしてました。

やはり、大人が子どものために好奇心の”タネ”をまいてあげることが大切ですよね。

よく「習い事は何をやらせたらいいですか?」という質問をいただくのですが、いろいろやらせてみて、最終的に何をしたいのかを自分で選んでもらうのがいいと思います。

仮にその時に見つけることができなくても、しばらく経った後でまたやりたい気持ちが湧いてくるかもしれません。子どもが夢中になるものを見つけられる”タネ”をできるだけたくさんまいてあげることで、後に大きな芽を咲かせることもあります。

習い事のようなお金をかける経験だけでなく、家族で旅行やキャンプ(レジャー)に行くだけでも子どもにとっていい刺激になると思います。

あとは、親が好きなものに子どもを巻き込んでみるのもいいのではないでしょうか?
親が好きなことをやっている姿を子どもが間近で見ることで、「自分も好きなことをやっていいんだ!」と言葉ではなく行動で示すことができます。

私の息子も、私が朝七時にカフェに行って仕事をしている習慣を見ていたようで、自分もマネし始めたんです。笑 

子どもは親が思っている以上に親の行動を観察しているんですよ。

子どもの世界に対する認識は親の行動範囲に比例するので、親自身が自分の行動範囲を意識することが大事です。

その範囲を大きくしていくことで、子どもが親や友達、学校の先生以外の人と関われる機会を増やし、新たな学びや好奇心を得るきっかけを増やすことができるかもしれません。

親が与える影響でいうと、親の日々の言動が子どもにどう響いているのかを意識することも大切ですよね。

私の息子がロボットの大会に参加したのは私の薦めではなく、ものづくりを通じて出会った友達から誘われたことがきっかけでした。親が、子どもがいろんな人から刺激をもらえる環境に身を置ける環境を用意してあげることは重要ですね。

ーお子さんの進路を考えるにあたって、子どもの”強み”をしっかりと認識することが大事だと思います。お二方は、お子さんの強みをどのように分析していますか?

子どもがどんなことに夢中になっているかを観察することが大事だと思います。

たとえば、YouTubeを見ていたら、「どんな動画見てるの?」「今はどんな動画が流行ってるの?」と問いかけをしていくことで、どんなことに興味を持っているのか知ることができます。

一時期、息子がフォートナイト*にすごくハマっていたのですが、よくよく観察してみると、友達と戦略を立てながら協力してプレイしていたり、わからないことをインターネットで検索して解決していたりしていました。

「大人が仕事でやっていることと変わらないじゃん!」と驚かされましたね。笑

友達と協力しながらプレイすることで、戦略性や意思決定能力、情報伝達力などいろんな力を養うことができる。

ゲームにしても、ただ強制的に止めさせるのではなく、むしろ一緒にプレイしてみてください。きっと、親世代の知るゲームとの違いにビックリされると思います。

⋆フォートナイトとは、Epic Gamesが販売・配信する、2017年に公開されたオンラインゲーム。クラフト要素のあるサードパーソン・シューティングゲーム(TPS)であり、PvEアクションやバトルロイヤル、サンドボックスといった異なるゲームジャンルのゲームモードを提供している。

昔はゲームはゲームでしかなかったけど、今は立派なコミュニケーションツールになってますよね。

つまり、「ゲームはダメ!」って言うのは「友達とのコミュニケーションもダメ!」ということと同義なんです。

「ゲームに対する認識を改めてみる」というのは学びになりました。とはいえゲームのメリットを知りつつも、「中毒」(子どもがただ漫然とゲームをしているだけ)なのか、「過集中」(友達と協力したり学びながらゲームをしている)かを見分ける必要があると思います。それについてはどうでしょう?

我が家では、ただ自由にやらせるのではなく「学校の成績が落ちたら一旦止める」というルールを設けています。

成績が落ちた原因がゲームによるものなのかそうじゃないのかを考えてもらい、その解決策まで自分で考えさせていました。ルールも半年ごとに変えたり、破った場合の罰則もつくっています。

そのようなルールは小宮山さんが考えたものですか?

いえ、必ず息子と話し合って決めていました。親の強制ではなく、子どもと両者合意の下でルールを決めています。

そのプロセスは本当に大事ですよね。親の強制を押し付けてしまうと、子どもは親の顔色を見ながら生活するようになってしまいます。

我が家も、家族で食事をしたり談笑したりする時間はゲームを止めさせ、寝室にスマホを持ち込ませないようにしてました。

ただ、夜の10時以降はゲームを禁止していたのですが、「海外のオンラインイベントに参加したいから、夜中の3時に自分で起きてイベントに参加したい」と言われたことがありました。

決められたルールはあるけど、自ら行動を起こして人を動かしていくのはいいことだと思ったので、私はそれを許しました。

大人になってから自分で考えて行動できる人間になってもらうためにも、子どものうちから自律性を育むことは大事ですね。

未来を生きる子どもへ親ができることは?

ー今までのお話を聞いて、子どもに対して親が何をしてあげられるかで子どもの人生が大きく変わっていく可能性があると思いました。お二方が親として実践していることや子どもとの関わり方で意識されていることを教えてください。

私は、子どもと親は一人の人間同士、対等な関係にあると思っています。子どもは決して親の所有物ではありませんし、親のエゴ(主観や利己心)で子どもの判断や意志を歪めてはいけません。

YouTubeやSNSも私たちが子どものころはありませんでしたが、今の子どもたちは当たり前のようにデジタルツールを使いこなします。時代の常識や価値観も大きく変化しているので、むしろ親の想像を超えることを歓迎したいですね。

私は息子が小学校低学年のとき、「一日3個、新しく発見したことを教えて」と聞いていました。

どんなに些細なことでも構わない。「今日はタバコの吸い殻がいっぱい落ちてた」とか何でもいいからと。笑

そのような問いかけを繰り返していくと、子どもがどんなところに目線を向けていて、どんなことに興味が向いているのかをだんだんと知ることができます。

素敵な問いかけですね。

我が家で一つ強く意識していたのは、親が必ずしも絶対的な正解を持っているわけではないということです。

子どもたちは日常的にインターネットからたくさんの知識や情報を得ているので、質問や問いかけを通じて、逆に親が子どもから学ぶこともあります。

ー親御さん自身が子どもの行動や興味に関する新しい認知を獲得することはとても重要ですね。おこがましい言い方ですが、親が「自分の認識や思い込みは間違ってるかも?」と自身に問いかけてみることで、バイアス(思い込み)を振り払えるかもしれませんね。

私たちの世代が受けてきた教育と違うので、無意識にバイアスがかかってしまうのは仕方ないことなので、メタ認知力*を持って一歩立ち止まって考え直すことは大事ですよね。

⋆メタ認知力とは、「自分の認知活動を客観的にとらえる、つまり、自らの認知(考える・感じる・記憶する・判断するなど)を認知すること」です。 自分自身を超越した場所から客観的に見ることに加えて、自分自身をコントロールでき、冷静な判断や行動ができる能力までを含めて、メタ認知能力と呼ばれています。

ーただ現実問題、いくら親の認識をアップデートしても、実際の教育現場が変わっていないのであれば新たなギャップが生まれてしまうと思うのですが…。

私の息子は中学まで公立の学校に通っていましたが、日本の小中で身につけられる基礎学力は世界でもトップレベルだと思います。

ただ、クリエイティビティを養う場が少ないので、その機会を確保するためにSOZOWに通わせてみたり家庭でつくることが大事です。

インターネットを使えばいくらでも教材はあるので、それらを活用してみてほしいです。

そして受験に関していうと、私自身が息子が受験する学校の過去問題を解いていました。

そうすることで、この学校は生徒にどんな力を求めていて、学校でどんな力を身に着けることができるのかがわかるんですよね。

すごいですね。笑

私が大事にしていたのは、偏差値の高さだけで進学先を選ばないことです。

塾や学校では偏差値を目安にして進路決定をすることが多いかもしれませんが、いろんな学校を見学して、自分の子どものやりたいことができる学校を選ぶことが大事だと思います。

加えて、学校の校則や学校の雰囲気、卒業生の進路も重要です。

もしグローバル志向なのに行った学校がそうじゃなかったら、また考え直さなくちゃいけなくなってしまいますから。

ー親の子どもとの関わり方という点で、思春期の子ども相手だとうまくコミュニケーションが取れないこともあるかと思います。お二方は、それについて何かされていましたか?

私たちの家庭は第三者から見ると、一人一人が独立している独立国家の集合体に見えているらしいです。笑

子どもだからといって親が過干渉になるのではなく、意志を持って独立した一人の対等な人間として接しているからですかね。

私の家族も親と娘の三人暮らしですが、子どもも親も各自がやりたいことをやっているので、体感的にはシェアハウスに近いです。

それぞれの得意分野を役割分担することもありますが、食事も自分で使ったものは自分で後片付けをするようにしています。

決して仲が悪いわけでなく、やりたいことはそれぞれでやって、何か協力するときはみんなで手伝うというスタイルですね。

ーお二方の話を聞いていると、今までの自分を苛んでしまう親御さんもいると思います。そういった方に向けて何かアドバイスはありますか?

そういった方は、もしかしたら一歩が100メートルなのかもしれません。最初から完璧を求めるのではなく、まずは10センチでもいいから少しずつ自分ができる範囲でやっていくことから始めてみてください。

私だってできていないことはたくさんありますから。笑

すべてを完璧にできている人はいないと思っています。

かくいう私自身も、部屋が散らかっていたり、よく物を失くしたりしてしまいます。笑

日本は校則も厳しく、完璧であることを求める風潮がありますが、自分含め、全員が不完全な人間だと思っています。だからこそ、一つのチームとして家族が相互補完できる関係性を築くことが大切です。

まとめ

第二部では、小助川との対談より、これからの時代に理想とされる子育てについて、「一日3個、新しく発見したことを教えて」といった、新しい発見や創造力の発達を促す実践的な教育法についてお話いただきました。

既存の価値観を変化させること。情報感度を高めて子どもが新たな好奇心を育むタネを与えること。たくさんの実践的な教育法を紹介していただきましたが、いちばん重要なのは、すべてを完璧に行う必要はないということだと思います。

子どもも大人も対等な関係同士、いっしょに新しい学びを吸収しながら、自らの成長につなげていくために、今日からできそうなアクション(行動)を少しずつはじめてみてください!

今回のセミナー(記事)が、みなさんのこれからの成長や子育てに役立てれば幸いです。

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