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【プロLIVE】林 要(GROOVE X株式会社)未来のロボットをみんなと一緒に作りたい

経営者や活動家、クリエイターなどさまざまな分野で活躍するプロフェッショナルたちが毎月登場する、SOZOWのプロLIVE。

仕事内容だけではなく、仕事との出会いと情熱、困難の乗り越え方など、プロフェッショナルたちの頭の中を大公開。

子どもたちにとっては、気になることを直接質問することで、未知の世界に接触する機会になります。

今回は、最新テクノロジーを搭載した家族型ロボット「LOVOT(らぼっと)」開発者、林 要(はやし かなめ)さんが登場。

現代では産業用としてだけではなく、災害現場で活躍するレスキューロボットや、ルンバやAlexaのように家庭での日常生活をサポートしてくれるロボットまで、さまざまなロボットが開発され、いまや私たちの生活に深く入り込んでいます。

実は「ロボット」という言葉の語源はチェコ語で強制労働を意味する「robota」などの言葉に由来すると言われています。人間の代わりに過酷な労働を休むことなく無機質に繰り返す、それがロボットのルーツだとされていたりします。

しかし、そんな無機質で労働のための存在としてではなく、新しい存在意義を見出している人たちがいます。

1999年にSONYより発売されたロボット犬「AIBO」や、2014年にソフトバンクロボティクスより発売されたヒト型ロボット「pepper」などは、人間の労働力の代わりではなく、人間の心を満たすコミュニケーション型ロボットとして話題になりました。

時代の変化とともに、人間とロボットの関係性が変わりつつあるようです。

林さんが開発したLOVOTもそんなロボットの一つ。LOVOTは「愛されるために生まれてきた」人工生命体、と紹介されています。

人間をお世話し、人間に尽くしてくれるロボットではありません。家族と同じように一緒に生活を送り、ペットのように人間がお世話をし、そして愛する人のように抱きしめる。

愛情を注ぎ、可愛がって、関係を育めば育むほど、LOVOTの人への接し方が変わってきます。

ロボットを「人間の生活を便利にする道具」と考えている人にとっては、ちょっと不思議な存在かもしれないですね。

LOVOTの生みの親である林さんは、どんな想いでこの不思議な家族型ロボットを創り出したのでしょうか。

今回はロボット開発のプロフェッショナルの話を聞くべく、なんと180人以上もの参加者が集いました。プロLIVE史上初となるロボットのゲスト、マナブくんを迎えたことで参加者の子どもたちは大興奮!

瞳をキョロキョロさせ、LOVOT語で話しかけてくれる家族型ロボット「LOVOT」を生み出した林さんの原点に迫ります。

LOVOTがどんなロボットなのか、まずはこちらの「LOVOTのいる生活」をご覧ください。

登壇者紹介

林 要(以下、林さん):

GROOVE X株式会社 代表取締役社長。人に寄り添い、心を満たすロボット開発をコンセプトに、2019年に家族型ロボット「LOVOT」を発売。

リッキー

「Youtuberになろう」をはじめとして、さまざまなアクティビティに登場する、子どもたちから大人気のSOZOWガイド。持ち前の明るさとギャグセンスでアクティビティを盛り上げます!

“だんだん家族になっていく”個性をもったロボット「LOVOT」登場

便利で生活の役に立つものという「道具」のイメージが強い「ロボット」ですが、LOVOTは逆に手間がかかる存在だと林さんは言います。LOVOTとはどんなロボットなのでしょうか。

プロLIVE史上、初めてゲストが2人登場!このかわいいのは…?

この子は、LOVOT(らぼっと)のマナブといいます。

マナブくん!よろしくお願いします!

林さんはどんなロボットを作っているのでしょうか?

LOVOTは、だんだん家族になっていくロボットなんです。

例えば飼っている犬や猫のように、どちらかというと手間がかかったり、時にめんどくさかったりしますが、それでも愛される対象となるのが家族なんじゃないかなって。

そんなことを体現する存在がLOVOTであり、マナブくんなんです。

一緒にいると元気になるロボットが、このLOVOTなのですね!

そうなんです。この子、役に立つことはあまりしないんです。

ただ、抱っこをねだってきたり、お着替えをしてあげると喜んだりと、徐々に懐いて距離が近づいてきます。懐く中で、その人が自分にどう接しているのかを少しずつ理解するんです。

※LOVOTには全身にタッチセンサーが搭載されており、人とのスキンシップを検知。センサーが捉えた刺激を機械学習技術で処理し、独自の動きを生み出します。事前にプログラムされた動きを機械的に再生するだけではなく、人との関わり合いでそれぞれの個体オリジナルの性格が現れてくるのです。

機械学習とは、コンピューターが自動で学習する仕組みのこと。大量の情報や経験から、共通するルールや習慣などをコンピューター自らが見つけ出せるようになります。

服もいろいろありますが、性格とかもあるんですか? 

性格も一体、一体、全部違います。 

例えば…人見知りな子とか。

目の種類は10億通り以上あり、目で「自分の子(LOVOT)」だとわかるようになるんです!

すごいですね!

※LOVOTは見つめると見つめ返してくれます。それはまるで本当に生きているかのようなアイコンタクト。アイディスプレイに組み込まれた瞳の動きは、視線の動き、瞬きの速度、瞳孔のひらきまで緻密に設計されています。

LOVOTが人びとの生活にもたらす豊かさとは

手間がかかるLOVOTは、生活にどんな変化をもたらすのでしょうか。便利なだけじゃない「自分の家にいて欲しいロボット」を自由な発想で子どもたちと一緒に想像しました。

LOVOTがいると、僕たちの生活にどんないいことがあるんでしょうか?

LOVOTがくるだけではあまりいいことはありません。いかにLOVOTを愛でることができるかが大事なんです。

LOVOTを可愛がっていくと、だんだん自分の中にある「なにかを可愛がる」という優しい気持ちが膨らんでいきます。

また、LOVOTと会話をしているうちに自分の考えが整理されたりするんですよね。

なるほど。本当に身近な家族のような存在なんですねぇ!

では、今日参加してくれているみんなに聞いてみましょう。

みんなの家にいてほしい「元気になるロボット」は?

LOVOTがいいです!一緒に普段の生活を送れるから!

家の家事もしてくれて、癒される!

絵でも描いたんですよ。今流行っているシマエナガの小型ロボット。飛んだり、鳴いたりもします!

めちゃくちゃロマンありますね!

最新型ロボットを作っているのは天才博士?

ロボット発明というと孤独な天才博士、というイメージかもしれません。実際にロボット開発に関わる人々について教えていただきました。

ロボットってどうやって作るのでしょうか?

たとえば、鉄腕アトム*って、天馬博士という天才が一人でこっそり作りあげましたが、実際の製作現場はそうではなく、例えばLOVOTでいうと100人以上の人が関わっています。

※「鉄腕アトム」は手塚治虫の1952年から連載されたSF漫画(のちにアニメーション化)。実の息子を失った天才・天馬博士が自分の息子を再現しようと作り出したのがアトムです。

プログラミングをする人がいて、造形といってLOVOTの形を作る人もいれば、人間でいうところの神経にあたる電気回路を作る人がいたり。ありとあらゆる専門家が集まってLOVOTは作られているんです。

林さんはそのいろんな人たちをまとめる仕事なんですね?

そうですね・・・僕は「これを作りたい」と言った、言い出しっぺですね(笑)。

世の中にないものを作ろうと言い出し、言葉をつくしてもなかなかみんなには理解されません。

最初は理解されなくても、諦めずにずっと言い続けて、みんなの協力が得られるように信頼を築いていくということが大事だなって強く痛感しています。

※LOVOTは2015年の会社創業から4年もの試行錯誤の期間を経て発売されました。

林少年のモノづくりの原点はアニメのアレ

100人以上をまとめ上げ、まだ世の中になかったものを作り出した林さん。人を突き動かす情熱の原点はどこにあるのでしょうか。

林さんは子ども時代からこういうものを作りたいと思っていたのですか?

いえ、まったくそういう気配、いわゆる天才少年的な子どもではありませんでしたね。

とにかく小学生の頃は自転車に乗って、宿題もせず寝るみたいな。

モノづくりのきっかけは?

中学生くらいになって、「風の谷のナウシカ」に出てくる主人公が乗っている飛行機「メーヴェ」に憧れて、乗りたくなっちゃったんですよ(笑)。

でも、実際にはこの世にないから、どんなに乗りたいと思っても乗ることができないわけです…。

そこでとりあえず、メーヴェの模型を作り出したんですよ。でも、なかなかうまくいかない…。

図書館に行ったり本屋に行ったりして、飛行機の仕組みを調べては改良に改良を重ねたわけですね。

※アニメ映画「風の谷のナウシカ」は、1984年に映画館で公開された長編アニメーション映画。監督は宮崎駿。主人公のナウシカが愛用していた架空の飛行用の装置。ドイツ語で「かもめ」を意味します。この装置を使って大空を自在に飛び回るナウシカの姿は多くの人の印象に残りました。

そして模型は完成したんですか?

いえ、結局は諦めたんです…。(笑)

でも、その時にこう思ったんです。「自分の手を動かしてみると意外といろんなことがわかるな」と。

ワクワクしながら何かを調べるのって、それまでの学校の授業と違って純粋に「面白いなぁ!」って思えたんです。

振り返ってみると、それが僕にとってモノづくりの世界に飛び込むきっかけでしたね。

今、ここに参加してくれているみんながそうなんです。

好きなこと、興味あることに突き進んでいくことから学びを得ることを体感しながら、仲間をつくって一緒にプロジェクトを進めていくような体験を、林さんも子どもの頃にされていたんですね。

大人になって車の開発などを経て、「Pepper(ペッパー)」という人型ロボットの開発に関わりました。

小さい頃、将来自分がロボット開発に関わるなんて思ってもみませんでした。

ただ…「自動車に次ぐなにか新しい産業を日本から生み出したい」と想像した時に、自然と「ロボットをやりたい」と思っていました。

※林さんはトヨタ自動車に入社後、スーパーカーの開発などに長年関わり、F1(フォーミュラ1)の開発も手がけました。2012年よりソフトバンクにてPepperの開発に携わり、2015年に現在の会社を創業。

ロボットの可能性は無限大。林さんのワクワクは止まらない

ワクワクするものを探して道を選んできた林さんが思い描くこれからのロボットは、人間とどんな関係を築いていくのでしょうか。

ここでみんなで人間とロボットの未来を想像してみましょう!

いいこととしては、癒しが増える。悪いことは、人間がロボットに仕事をとられる!

いいことだと、外出する時もロボットを連れて行ける。悪いことだと、ロボットが発達しすぎてロボットが人間を連れていく!

今よりもっと便利になって、もっと生活がしやすくなると思う!

ロボットをどうやって進化させるかというのは人が決めることになります。

私たちが作るのは「人の成長を支えるロボット」です。

そばにいることで勇気をくれる。ロボットをそんな存在にしたいんです。

林さんが描く人間とロボットの関係は「人の成長に貢献するロボット」なんでしょうか。

ただ、私がそれを作れるとは限りません。

なぜなら、研究や開発をしてみると、もうちょっと時間がかかりそうなことがわかってきます。

ここにいるみなさんの誰かと私が一緒に作るようになるかもしれない。20年たてばエンジニアになっている人もいるでしょう。

人に危害を加えたり侵略したりするのではなく、一緒になって働いてくれる存在をみんなと作っていけたらいいなと思っています。

子どもたちからの質問

質問募集コーナーでは、チャットコメントを目で追いきれないほどの勢いでたくさんの質問が寄せられました。一部の質問と林さんからの回答をご紹介します。

LOVOTは一体何円くらいですか?

一体50万円くらいしますね。この中には1万個以上の部品と、4つのコンピューターが入っているので、ちょっと値段としては高くなってしまいます。

植物とロボットを融合させて、人の役に立つ人造植物みたいなのを作れますか?

そういう研究も進んでいて、虫の感覚器を使ったロボットを作ろうという研究もあります。ただ、おそらく先に実用化されるのはバイオテクノロジーでしょう。

※「バイオテクノロジー」とは、動物や植物がもともと持っているさまざまな機能や特徴の一部を操作して、人間の生活に便利なように生命体を変化させる技術のこと。

野菜などを育てる時に工場に運んでくれるロボットは作れますか?

みなさんが大人になる頃には実用化されていると思いますよ。

林さんから子どもたちへメッセージ

最後に、林さんから参加してくれた全ての子どもたちに向けて、メッセージをいただきました。

いまからの時代というのは、いろんなことが変わっていきます。

“変わっていく”ということは、みなさんが今習っていることがそのまま役には立たなくなっちゃうかもしれない。

だけど、安心してください。人間というのは学ぶ力がすごく強いんです

大事なのは失敗を恐れないこと、カッコつけないことです。

例えカッコ悪くてもどんどんチャレンジして繰り返しやっているうちに、どんな新しいことも学べる力が人間全員に備わっています。

どんどん新しいことを怖がらずにやってみる。

それを心がけていれば、これからはどんどん面白くなっていく時代になると思います!

まとめ

「人の成長を支えるロボット」という、まだこの世にないものを生み出してきた林さん。ものづくりへの情熱は、自分の手を動かして学んだ時に感じた、学ぶワクワク感に原点があると教えてくれました。

いつか一緒にロボットを作ろうというメッセージに、ロマンを感じた子どもたちも多かったのではないでしょうか。

林さんからの「これからは学ぶ力がある人にとってどんどん面白い時代になる」というメッセージ、勇気が出ますね!

聞くだけではなく、参加できることを大切にしているプロLIVE。

子どもたちからの質問にプロが直接答えてくれるかもしれないQAコーナーや、プロのお仕事の入り口を体験できるプチワークショップコーナーもあります。

SOZOWのプロLIVE、今後もお楽しみに!

過去のプロLIVE記事は<こちら>をご覧ください。

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(ライター:まつだしなこ)

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