【プロLIVE】戸城イチロ(漫画家)「目標に向かう道は1つとは限らない」
もくじ
経営者や活動家、クリエイターなどさまざまな分野のプロが毎月登場する、SOZOWのプロLIVE。
子どもたちは、お仕事についてのお話を聞いたり気になることを質問をしたりして、新たな世界に触れることができます。
今回は、プロ漫画家の戸城先生をゲストにお迎えしたプロLIVEの様子をお届けします。
大人になってから漫画家になることを志した戸城先生は、いったいどんな経緯でプロの漫画家になり、どんな想いでマンガを描き続けているのか。
数々の経験を子どもたちに語っていただきました。
登壇者紹介
戸城イチロ先生
漫画家、漫画講師
「マンガ」というメディアをフル活用して、さまざまな表現に挑戦。
これまで、マンガ雑誌で見るようなエンターテイメント作品から、学習・実用マンガ、宣伝・広告マンガ、チラシ用マンガ等を制作してきた。
マンガの描き方講師としての側面もあり、老若男女問わず、多くの人々にマンガを描くコツや楽しさを伝えてきた。
今回のガイド:いのちゅー
「デザインの世界」「未来の世界」をはじめとし、さまざまなシリーズに登場。
みんなの居場所をつくることを目指します!
絵を書くだけじゃない!「漫画家」シゴトって?
今日は、漫画家、漫画家の講師としてご活躍されている戸城先生にお越しいただきました!
戸城先生は今、どんな活動を?
いわゆる企業マンガや広告マンガ、あとはみなさんにもなじみがある学習マンガも描いています。
漫画の専門学校の先生もしていますね。
まずは、みんなに「漫画家」ってどんなシゴトをしているイメージなのかを聞いてみましょう!
ひたすら字と絵を描いている!
題名と中身についてとにかく考えまくる!
コマのなかに絵を描いて、読んでる人を笑顔にする!
みなさん結構詳しいですね!
実際、漫画家さんってどんなお仕事をされるのですか?
まずは「打ち合わせ」からはじまります。
特に「テーマ」「物語」「登場人物」については、何度も話し合いながら決めていきます。
そこでOKが出たら、ようやく絵を描き始めるんです。
絵を描く以外にもやることが多いんですね。
ちなみに他にはどんなことをされるのですか?
以前は出版社との仕事が多かったんですが、最近は広告や企業に関する漫画を描いています。場合によっては自分で営業をすることもありますね。
日本人はみんな漫画が好きなので、異業種交流会などに行って、「商品やサービスのPR漫画や自伝漫画を描きませんか?」と提案することもあります。
いろんな種類の漫画があるんですね!
目標に向かう道は1つとは限らない
ちなみにぼくのなかでは、漫画家さんになるような人は、小さいころから絵を描いたりストーリーを考えたりするのが好きっていうイメージがあるんですけど、実際みなさんそうなんですか?
たしかにそういう方もいますね。
でも実は、ぼくが漫画家を目指したのは23歳からなんです。
えー!そうなんですね!
でも、なぜ23歳から漫画家を目指そうと?
きっかけは何かあったんですか?
中学・高校と上がっていくと、進路について考え始めるんですけど、当時のぼくは何もわからなくて…
周りの大人に相談して言われた通りに動いて、大学まで卒業しました。
20歳を過ぎたあたりから、やっと自分の人生のことを考え始めるようになりました。
「まだ自分のことがよくわからないなら、とりあえず自分がいちばん尊敬する仕事をしよう!」と思って、美術の専門学校に入り直しました。
大人になって、はじめて自分のやりたいことに気づいたんですね。
でも、漫画家になるのってかなりハードルが高いんじゃないですか?
実は、自分の描いた漫画が「少年ジャンプ」に連載されるのは、東大に合格するより100倍難しいと言われています。
そんなに…!
そうなると、ほとんどの人はプロの漫画家になれないんですか?
ジャンプだけで考えるとそうなんですけど、「プロの漫画家になりたい!」って考えると必ずしもそうとは限らないんですよ。
たとえば、世の中には「少年サンデー」や「少年マガジン」もありますし、女の子向けなら「リボン」や「ちゃお」のような少女漫画、他にも大人向けの雑誌などもあります。
あとは、ぼくがやっているような広告系の漫画や企業系の漫画もありますよ。
「道は1つだけではない」ってことなんですね。
そうなんですよね。
視野を広くすると、意外にいろんな道があることに気づきます。
おもしろいですねぇ!
先生は、企業に出向いて漫画を描いたりするようになるまでにどんな経緯があったんですか?
まずはプロの漫画家になるには、どれだけ経験を積んできたかが大事なんです。
小学生のときから絵を日常的に描き始めている人もいますが、ぼくは23歳から始めたので、ととにかく仕事をしないとうまくなれなかったんですよ。
ジャンプのようにごく少数の人しか描けないところではなく、自分で営業をして仕事を取ってきて仕事をしながらうまくなっていく方法しかなかったんです。
経験や実績がなかったから、自分で営業をすることを始めたんですね。
「目標に向かう道は必ずしも1つとは限らない」というのは、とても大事なことです。
みなさんにも夢があると思うけど、それを大人や友だちに言っても応援してくれる人もいれば反対してくる人もいると思います。
反対してくる人は「そんなので食べていけるのは、ほんの一握りだよ」と言ってきます。
たしかに間違っていませんが、でも、その人の言っていることが正しいとも限らない。
大人になって社会を知っていくと、昔と違って今はいろんな手段や技術を使って、自分の作品を発信することができます。
実際、漫画家でも出版社とだけ仕事をする人はかなり減っていて、自分で営業したりTwitterでバズったりしたりする人もいて、いろんな方法でプロになる人がたくさんいるんです。
本当に大事なのは「どうすれば絵がうまくなるのか?」「どうすればみんなが楽しんでくれる物語をつくることができるのか?」という技術の根本のことを考えることですから。
「マンガ」はどうしたらうまくかけるの?
では、戸城先生!
どうすればマンガがうまく描けるのかを教えていただきましょう!
プロの漫画家を目指すには、まずは絵を上達させることが大切なんです。
実は、短時間で絵がうまくなる方法があります。その名も「クロッキー・デッサン」。
クロッキーはフランス語で「速写」という意味で、速く書く練習には持ってこいの方法なんです。
では今日は、一緒に「クロッキー・デッサン」に挑戦してみましょう!
みんなで「クロッキー・デッサン」をやってみよう!
ちなみに、クロッキー・デッサンはどうやってやるんですか?
まずは、モデルを用意します。必要な道具は紙とえんぴつだけです。
みんなしっかり準備できてる!
では早速はじめていきますが、今から2分間モデルを映します。2分ピッタリでどこまで描けるかみんなで挑戦してみよう!
みなさん2分しかないと短くて難しかったと思うけど、とても良く描けていますね。
ビックリしました!ぜひとも、描いたものは記念に持っておいてください。
マンガを楽しんでもらうためには「おどろき」をつくる
マンガつくりにはストーリー設計が欠かせないと思うんですが、読む人に楽しんでもらうために意識していることは何ですか?
これは子どもたちに一度聞いてみましょう。
漫画家やお笑い芸人さんのようなエンターテイナーが、お客さんを楽しませるために考えていることはどんなことだと思いますか?
冒険みたいに、続きがあるストーリーを作る!
物語に山場をつくって、読んでいる人を物語の世界に引きずり込むようにする!
現実ではあり得ないことを描く!
みなさんセンスいいですね!
ちなみにぼくがいちばん大事だと思っていることは、「おどろき」をつくることです。
きっとみなさんが笑うときって、何か意外な出来事があったときですよね。
「おどろき」をつくるのに難しいところは、「前振り」が必要なことです。読む人に予想させておいてそれとは違う結果になると「おどろき」をつくることができます。
お笑いでいうと、「フリ」と「オチ」ですね。
なるほど!
一度予想させておいて、全然違う話に変えていくことが大切なんですね。
この「おどろき」のつくり方はエンターテインメントの基本なので、アニメでもマンガでもすべてに共通することなんです。
みんなも今度からアニメを見るときは、この「おどろき」の展開に注目できるといいね。
普段の日常生活で自分が笑ったときに「なぜ自分は笑ったのか?」を客観的に考えられるとなおいいですね。
戸城先生が語る「マンガ」の魅力
ここまではマンガのつくり方について学んできましたけど、マンガそのものの未来って、これからどうなっていくと思いますか?
ぼくは結構、明るいと思います。
漫画家の先生として気づいたのは、外国からマンガを学ぶために日本に来て専門学校に通っている方が多いことです。
今はコロナで難しい状況ですが、日本のマンガカルチャーは世界中を席巻する力を持っているんです。
すごい!超人気ですね。
子どもたちにもマンガの魅力を聞いてみましょう。
キャラクターの声を想像できる!
自分の知らない世界を知ることができる!
絵に立体感がある!
マンガには国境がない
みなさんすばらしい意見ですね。
ちなみにぼくの意見は、「マンガには国境がない」ことです。
紙とペンさえあれば誰でも描けますし、本や電子書籍で安く簡単に届けることができます。
セリフの言語さえ変えてしまえば、誰でも読むこともできるんです。
自分で自由につくりだせる
あとは、「自分で自由につくり出せる」こともマンガの大きな魅力です。
作者ごとに別々の世界観があります。
たとえば映画は、漫画と違って制作費が100億円ほどかかります。そうなると、いろんな人が介入して作者の自由度が低くなってしまうんです。いわゆるスポンサーですね。
でも、マンガなら基本的に3〜5人の少人数で作れます。必要な道具も紙とペンだけですし、作家さんへの原稿料も映画に比べれば全然安いです。
関わる人が少ない分、個人の世界観を再現しやすく、個性も発揮しやすい。
まさに、マンガの持つ可能性は無限大なんです!
戸城先生にとって「マンガ」とは?
では最後になるんですが、戸城先生にとって「マンガ」とは何ですか?
ぼくにとってマンガは「道」です!
漫画家を目指したスタートは遅かったんですが、クロッキー・デッサンを何回も続けていくうちに少しずつうまくなって、自分の人生がどんどん進んでいく感じがしたんです。
最近ようやく、点だった日々がすべて線になっていく感覚を楽しめるようになってきました。
よく見ると、先生のペンネームにも「道」の意味が含まれていますもんね。
そうなんです。
「戸城イチロ(途上一路)」というペンネームにも「道の途中」という意味があるんです。
ぼくは子どものころ、何をやるにしても周りに流されることが多かったんですけど、大人になってからの方が人生が楽しいです。
自分が本当に楽しめるものを見つけると、途端に人生も楽しくなるし、難しいことからも逃げずに挑戦できるようになります。
みんなにはぜひ、夢中になれるものを見つけて欲しいなと思います。
最終的には、そこで得た力を社会でどう活かすかを考えられるようになって欲しいです。
戸城先生への質問タイム!
最後に子どもたちからの戸城先生への質問を募集したところ、たくさん手が上がりましたので一部をご紹介!
マンガ家になるきっかけは何でしたか?
昔の自分にはやりたいことが何もなかったんですけど、手塚治さんの『ブラックジャック』を読んで泣いてしまったんですよ。
「人生とは何か」「命とは何か」を表現している作家さんがいるのに、自分は何をしているんだろうって。
そこで衝撃を受けて、「自分のやりたいことをやろう!」と思うようになったのがキッカケですね。
マンガをつくるときにいちばん大変なことは何ですか?
作品次第ですが、自分のオリジナルのマンガだと「何を書くか?」という企画を考えるのが大変ですね。
お客さんと一緒に進める場合だと、お客さんの要望をすべてくみ取って形にしていくことが難しいです。
いちばん時間がかかるのは、やっぱり絵を描いているときですね。
絵が下手でもマンガ家になれますか?
なれます!
正直、絵はそんなにうまくないけど、話がおもしろくて売れている作家さんもいます。
逆に、ストーリーを考えるのが苦手だけど、絵を描くのが得意な作家さんもいるんです。
ストーリーを考える人と、絵を描く人は別々なことも多いので、どちらかが得意なら全然大丈夫ですよ。
まとめ
プロの漫画家としてご活躍されている戸城先生から、おもしろい刺激的なお話を聞くことができました。
なかでも、「目標に向かう道は必ずしも1つとは限らない」というメッセージに心を動かされた子どもたちもたくさんいたのではないでしょうか。
さまざまな分野のプロから直接お話が聞ける機会は、子どもたちの好奇心に火を付ける貴重な機会。SOZOWのプロLIVEを今後もお楽しみに!
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