【プロLIVE】成田 淳(映像クリエイター)「人を喜ばせたい」という思いこそ、クリエイティブの原動力
もくじ
経営者や活動家、クリエイターなどさまざまな分野で活躍するプロフェッショナルたちが毎月登場する、SOZOWのプロLIVE。
仕事内容だけではなく、仕事との出会いと情熱、困難の乗り越え方など、プロフェッショナルたちの頭の中を大公開。
子どもたちにとっては、気になることを直接質問することで、未知の世界に接触する機会になります。
今回登場いただいたのは、【映像をつくるプロ】。
映画やドラマや、スポーツ中継といったエンターテイメント。TVや電車モニター、街頭ビジョンに映し出されるCM。映像を目にしない日はないと言えるほど、私たちの身の回りにあふれています。
TikTokやYouTubeといった映像プラットホームの拡大により、今では誰もが映像クリエイターとして映像を撮影・編集し、発信することができるようになりました。
そしてVRによる擬似体験できる映像コンテンツも続々と誕生し、モノクロから始まった映像の進化は止まるところを知りません。
そこで気になるのが、映像をつくることをしごとにするプロとは、どんな人たちなのか。
今回映像をつくる仕事について教えてくださったのは、映像クリエイターの成田 淳さん。CMだけではなく、ドキュメンタリー、3DやVRといった新しい表現を使った映像作品にも次々に挑戦していく成田さんの飽くなき挑戦の日々のお話は、聞いている我々も胸が熱くなります!
※VRとは、Virtual Realityの略で仮想現実とも呼ばれています。専用のゴーグルで視界を覆うことで、360°映像を映しだし、まるでそのデジタル上の空間が現実であるかのように擬似体験できる仕組み。
登壇者紹介
成田 淳(なりた じゅん):映像監督・ジャーナリスト・3Dデジタルアート・VRアーティスト。株式会社WAVE代表取締役。日本に国籍がない状態で生まれいじめや差別の中で過ごしたが、23歳のときに映像制作に出会い生きる希望を見出しました。以後、多くの著名人からもその感性を認められ類稀なる才能を発揮。クールジャパンアワードを受賞。
リッキー:「YouTuberになろう」シリーズをはじめとしてさまざまなアクティビティに登場する、子どもたちから大人気のSOZOWガイド。持ち前の明るさとギャグセンスでアクティビティを盛り上げます!
プロがつくる映像とは!?驚きの表現力
自分の作った映像をTikTokやYouTubeなどで発信できるようになった現代。多くの人にとって映像づくりはより身近なものになってきました。しかし一方で、プロならではの驚くべき表現方法もあります。成田さんのお仕事の一部をご紹介いただきました。
本日は映像クリエイターである成田淳さんと参加してくれているみんなで、映像の世界を楽しんでみたいと思います。よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
まずは成田さんが作っている映像を実際に見てみましょう。
かっこいい映像ですね!参加してくれているみんなのリアクションも、「かっこいい!」「文字が動いている!」と盛り上がっています。
この映像にはタレントの手越祐也さんが出演されていますが、他にはどんな方とお仕事されているのでしょうか?
こちらのスライド(画像)にあるように著名人のほか、大手企業からもお仕事をいただいています。
もしかして参加してくれているみんなも、成田さんが作った映像をどこかで見ているかもしれないですね。
たとえば、ぼくたちの生活のどんなところで映像が使われているのか、みんなに聞いてみたいと思います。
ビルの大きなスクリーンに映像が出ているのを見たことがあります。
携帯の操作画面でアニメーションが動くのも映像だと思う。
すばらしい!映像はイベントやweb、テレビやゲームなど、いろいろな使われ方があるんだよね。
次に、成田さんの手にかかればこんな映像も作れるという例をご紹介したいと思います。
映像が人物の後ろだけではなく、手前にも見えますね!?
これはプロジェクションマッピングという空間を演出する方法の一つです。3Dでつくった映像を特殊なスクリーンにプロジェクターで投影すると、透過して見えます。
成田さんはどうやってこんなかっこいい映像をつくるのですか?
ぼくが使っているソフトはAdobe After Effectsというアニメーションや3Dを作るソフトです。最初はちょっと難しいですが、YouTubeなどでもたくさん使い方動画が配信されています。
ぼくも当初、独学で取得しました。
映像の動きを全部自分の思った通りに作れるということですよね?
はい。
映像の動き方は、1秒ずつ決めていきます。少しずつずらして動きを作っていき、それを全部繋げると先ほどの映像のようになるのです。
1秒ずつですか!?細かい作業なんですね!
映像づくりを始めたきっかけは?
映像編集ソフトをいくら使いこなせても、やはり映像づくりには生まれながら持っているセンスが必要というイメージがあります。成田さんはどうやって映像づくりのプロになることができたのでしょうか。
まずは成田さんが映像づくりを始めたきっかけをお伺いします。
参加しているみなさんもびっくりするかも知れませんが、ぼくは4年前までスーパーのレジで働いていたのです。
写真(画像)の真ん中が4年前のぼくです。
それは意外でした!でも、映像制作は学生時代からされていたんですよね?
どんな学生時代を過ごされていたんですか?
ぼく、学校にあまりいっていませんでした。友だちもそれほどおらず、勉強もあまりできなくて…。
そんな学生生活だったのですが、小学6年生か中学生1年生のころにPCに出会ったのです。
そして、オンラインゲームを通じて友だちを作ったり、mixiで新しい出会いを体験したり、PCを使っていろいろな人とコミュニケーションをとれる面白さに夢中になりました。
※mixiとは、2004年に日本で始まったソーシャルネットワーキングサービス。知人や同じ趣味の仲間たちと手軽にコミュニケーションを取ることができることで当時大きな話題になりました。
その時点では、まだ映像はつくっていないんですよね?
はい。転機が訪れたのは高校生の時です。
歌がうまい友人が文化祭に出るというので、友人が歌うステージに映す映像を僕がつくってみようかなと思いつきました。
そこで初めて編集ソフトを使って映像をつくってみたんです。
そして当日。流れた映像を見て、先生や友だちが感動してくれたんです。自分でも誰かを喜ばせることができるんだと感じた瞬間でした。
そこから映像の学校に行くのではなく、スーパーのレジ打ちを始めたのはなぜですか?
本当は大学や専門学校で映像の勉強をしたかったのですが、家庭があまり裕福ではなく進学することはできませんでした。
しかもリーマンショックもあり、就職先の選択肢も多くはありませんでした。
そうだったのですね。
スーパーのレジ打ち時代に訪れた、次の転機はなんだったのですか?
次の転機は、ぼくが毎週礼拝に通っていた教会でした。その教会で、教会のお知らせやイベントの紹介を映像でつくってみないかと誘われたのです。
それで、スーパーで働くかたわら、仕事が終わった後に映像をつくるという日々を過ごしました。そしてある映像が、たまたま教会に来ていたクリエイティブ関係の人の目に止まったのです。
すごい人生ですね!
参加しているみんなからも「泣けてきます」「奇跡だ!」というコメントがきています。
成田さんは最初に文化祭でお友だちのために映像をつくったときからずっと、映像で誰かに喜んでもらうというのを大事にされてきて、それがプロとしての現在のお仕事に繋がっていくんですね。
そうですね。映像を作ってあげるとすごく人に喜ばれるんですよ。それがとにかく嬉しくて。それで諦めずに作り続けることができたのだと思います。
なんだかんだで、教会の映像がプロの目に止まるまでの間に、800本以上の映像を作り続けていました。
「誰かのために」というのがエネルギー源になっていたんですね。
映像をつくる「楽しさ」とは?プチ映像クリエイター体験
映像づくりの原動力は「人に喜んでもらう」ということだという成田さん。他にも映像を作る楽しさというのは、どんなところにあるのでしょうか。プチ映像クリエイター体験を通し、映像をつくる仕事の楽しさを参加者のみんなにも体験してもらいました。
映像づくりの楽しさというのは、どこにあるのでしょうか?
たくさんの人が力を合わせて一つの映像を作り、その映像で誰かを感動させられることです。
映像を見ている側からすると、見ている時間は一瞬かもしれない。けれども裏側では、たくさんのチームが協力し合って一つの映像を作っています。
たとえば、撮影する人、編集する人、照明の人、映像の色を作る人。企画を考える人もいます。そういう人たちがみんなで一つの映像を作っている。これってすごいことだと思うんですよ。
いろんな人が一つの目標に向かって作った映像は、いろんな想いが込められていそうですね。
そうですね。
ぼくのつくる映像の場合は「見えない心の声を表現する」ということを目指しています。
たとえば、人間の視点ではなく「時計の気持ち」を表現したCMを作ったことがあります。
「時計の気持ち」というのはどういう意味でしょうか?
時計は5年、10年使うことができますよね。修理して大切に使って欲しいということを伝えたいと考えた時、人に使われる側の時計の目線で表現するストーリーがいいのではないかと思いつきました。そしてそのストーリーを映像化していったのです。
まず映像のストーリーを考えるんですね!
それではここで、参加してくれているみんなにも映像クリエイター体験として、ストーリーを考えてもらいましょう。
サイズが小さくなって古着屋さんに出された靴が、新しい持ち主に出会ってセカンドライフを手に入れるという話。
まだ履けるのに捨てられていく靴の悲しい気持ちを表現する。
みんな素晴らしいですね!
成田さんだったらどんなストーリーの映像をつくりますか?
ぼくだったら、オーダーメイドの靴屋さんを舞台に、靴を作っている人の視点で映像をつくりたいですね。その人だけの一足が生まれて、手元に届くまでのストーリーを描きたいです。
プロ直伝!映像づくりが上達するために大切なこと
本日参加してくれたみんなの中には、すでに映像を作ったことがある人もたくさんいました。自分でつくった経験があるからこそ気になるのは、どうやったら成田さんのようなかっこいい映像をつくることができるのか、ということですね。成田さんに映像づくりの秘訣を教えていただきました。
かっこいい映像をつくれるようになるためのコツみたいなものはあるのですか?
大事なことは2つあります。
まず1つ目は、「いろんな映像をみてマネをする」ということです。
みんなが考えている以上に、この世界は映像にあふれています。電車内でも映像が流れているし、街を歩いていてもサイネージ広告で映像を目にします。ぼくも、とにかくいろんな映像を見て表現を参考にするということをたくさんしてきました。
2つ目は、「誰かのために映像をつくる」ということです。
あの世界的大ヒット映画を生み出したスティーブン・スピルバーグ監督も、最初に撮った映像は自分の家族の映像でした。お母さんが喜んでいる顔や、家族でキャンプにいった時の楽しい思い出を撮ったことがきっかけだったんですね。世界的映画監督の映画作りも、人を喜ばせたい、誰かのために作りたいというところから、始まっているんです。
※スティーブン・スピルバーグとは、ハリウッドの映画監督。1975年「ジョーズ」で大ブレイク。「E.T」「ジュラシック・パーク」「インディージョーンズ」シリーズなど数々の大ヒットを記録し、2018年には彼の監督した作品の総興行収入は約1兆700億円を超え、世界最高記録となりました。
子どもたちが成田さんに聞きたいこと
すでに自分でも映像編集経験がある参加者からは、どうしたらもっといい映像を作れるのかという具体的な質問が次々に寄せられました。プロからの直々のアドバイスに、質問者も大興奮です。
早いテンポの映像をつくることが好きなのですが、なにか気をつけることはありますか?
映像編集には緩急が大事です。まず冒頭は、人を惹きつけるためにテンポの早い演出を入れて、そこから少しテンポを緩め、また早めていくということを意識するといいでしょう。
エフェクトの選び方については、自分の好きなものを統一感を意識して入れるということが大事です。
映像編集するときに使える、おすすめソフトがあったら教えてください。
WindowならFimora(無料)ですね。スマホならCapCat(無料)。そこからスキルアップするなら、Adobe Premiere Pro(有料)に進むといいと思います。
これから挑戦したいことはなんですか?
ぼくは今、渡り鳥の映像を撮っています。渡り鳥が長距離移動するときに休憩をする干潟が、世界中で減少してきているんですよ。子どもたちにも伝わるようなわかりやすい映像で、その現状を伝えていきたいと思っています。
成田さんから子どもたちへメッセージ
最後に成田さんから、未来のクリエイターになる可能性を秘めた本日の参加者のみんなに向けて、熱いメッセージをいただきました!
ぼくは今、冒頭でご紹介した有名人の皆さんの映像を撮ることより、ジャーナリストとして社会で悲しんでいる人の声を映像で届けたいと思っています。その決断をしたときは、たくさんの人に大反対されましたが、ぼく自身はものすごく幸せでした。
面白いことに、自分の感覚を信じて本当にやりたいことを追求していたら、ぼくの作品の雰囲気も変わっていきました。クリエイティブ力や才能って眠っているだけなんですよ。眠っているから、実際にやってみて初めて芽生えてきます。
だからこそ、自分の感覚を信じて、自分らしく生きていってほしいなと思っています。
今日ここに参加してくれた君たち一人ひとりが、ものすごくクリエイティブで、ものすごいセンスを持っているのだから。
まとめ
今日参加してくれた皆さんは、もしかすると映像をつくるプロは、天賦の才をもった生まれながらのクリエイターを想像していたかもしれません。
しかし成田さんは、逆境下においても「人を喜ばせたい」「感動させたい」という原点から決してぶれず、映像を直向きにつくり続けた努力の人でした。その生き方そのものに勇気をもらい、心を揺さぶられた子どもたちも多かったのではないでしょうか。
誰もが手元にあるPCやスマホで映像を作ることができる時代。自分の感覚やクリエイティブ力を信じて、表現することに挑戦していきたいですね!
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聞くだけではなく、参加できることを大切にしているプロLIVE。
子どもたちからの質問にプロが直接答えてくれるかもしれないQAコーナーや、プロのお仕事の入り口を体験できるプチワークショップコーナーもあります。
SOZOWのプロLIVE、今後もお楽しみに!
過去のプロLIVE記事は<こちら>をご覧ください。
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(ライター:まつだしなこ)