SOZOWからのリポート

【プロLIVE】上原 利之(株式会社アッパーグラウンド)自分がおもしろい!と感じたことに自信をもつ大切さ

経営者や活動家、クリエイターなどさまざまな分野で活躍するプロフェッショナルたちが毎月登場する、SOZOWのプロLIVE。

仕事内容だけではなく、仕事との出会いと情熱、困難の乗り越え方など、プロフェッショナルたちの頭の中を大公開。

子どもたちにとっては、気になることを直接質問することで、未知の世界に接触する機会になります。

今回登場いただいたのは、【ゲームをつくるプロ】

家庭用ゲーム機の誕生はおよそ100年前です。世界中で家庭用ゲーム機の開発が進み、1983年には任天堂がカセット交換式のファミリーコンピューター(ファミコン)を発売。ゲーム本体である「ハード」と、ゲームの中身である「ソフト」をつくる会社にわかれたことにより、多くのゲーム製作者が革新的なゲームを作ることができるようになりました。

1990年代に加熱したゲームボーイ、PlayStation、セガサターンなどゲーム機の開発競争を経て、2000年代にはインターネットの普及によりオンラインゲームの人気が高まります。

そして、現代。世界中の人とオンラインでつながり一緒に遊べるという体験は、遊びという枠をこえ、教育や社会課題の解決にまで貢献するようになってきました。

常に進化し続けるゲームをつくっているのはどんな人たちなのでしょうか。

ゲームをつくり続けて25年という、株式会社アッパーグラウンド 代表取締役でありゲームプランナーでもある上原 利之さんにゲーム開発の裏側や、ゲームプランナーとして大切にしている考え方を伺いました。

登壇者紹介

上原 利之(うえはら としゆき)

株式会社アッパーグラウンド 代表取締役社長。2014年の創立以来、家庭用ゲーム機からスマートフォンアプリなどディバイスやジャンルをまたいでさまざまなゲームを生み出すゲーム企画のプロフェッショナルチームを率いています。代表作品は「いただきストリート ドラゴンクエスト&ファイナルファンタジー「LORD of VERMILION」シリーズなど。

さっちゃん

SOZOWガイド。笑顔でアクティビティを盛り上げます!

「ゲームをつくる」シゴトにはどんなものがある?

私たちが慣れ親しんでいるゲーム。いったいどんな人たちが、どういう工程でつくっているのでしょうか。ゲームをつくる仕事について、詳しく教えていただきました。

上原さん、よろしくお願いします!

よろしくお願いします!

早速ですが、上原さんが関わられたこちらのゲームについてお伺いします。

完成までにどれくらいの期間がかかったのでしょうか?

おおよそ1年半から2年かかりました。

そんなに時間がかかるんですね!

どういう人たちが関わってゲームはつくられるのでしょうか?いま参加してくれている人たちにも聞いてみたいと思います。

プログラムする人、キャラクターをデザインする人、それからストーリーを作る人だと思います。

まさに今日、ご紹介しようとしていたことをお話してくれましたね(笑)。

1つめは、「企画」を考える仕事です。企画とは、ストーリーや内容のことですね。どんなゲームだったら面白いかというアイディアを誰かが言い出さないと始まらないので、企画がまず最初にあります。

2つめが、「しくみ」を考える仕事です。先ほどゆりかちゃんが言ってくれたプログラム前の段階にあたります。たとえば「そもそもこのゲームはなにをやって勝つゲームなのか」「このボタンを押すとなにが起こるのか」というルールを決めていくんですね。

3つめが、「絵(グラフィック)」を考える仕事です。ゲームの世界観を、画面で実際に表現するにはどういう絵にするかを具体化していきます。

4つめが、「音楽」を考える仕事です。先ほどお話しした絵の雰囲気にあう音楽はどういうものかイメージを固めていきます。たとえばテンションの上がる場面では、テンションの上がる音楽があるといいですよね。

本当にたくさんの人がゲーム作りに関わっているんですね!

ぼくが関わっているのは、企画を考えるところです。一番最初に「どんなゲームだったら面白いか」「どうしたらみんなが喜んでくれるか」を考えるゲームプランナーという役割です。

具体的にはどういうことを考え、決めていくのですか?

まずゲームで遊んだ人が、楽しい気持ちになって欲しいのか、ドキドキする気持ちになって欲しいのかといったことを考えます。

それを実現するために、次のスライド(画像)に書いてあるようなことを決めていきます。

こんなに決めることがあるんですね!

ゲームをつくる人は、みんなこういうことを考えたいんですよ。この段階では、みんなから自分が好きなことがたくさん出てきます。そのなかで「なにが一番おもしろいのか」を突き詰めていきます。

ゲームづくりに関わる人は、みんな「おもしろい」の感覚を大事にしているんですね。

そうなんです。

「おもしろい」という感覚と、「難しい」「悲しい」「嬉しい」の感覚は少し違うんですよね。おもしろいという気持ちは、いろいろな感覚を含んでいるからです。難しかったけど結果としておもしろかった、悲しかったけどおもしろかった、ということありますよね。

おもしろいという感覚は人によってバラバラです。

ぼくの仕事は、「なんで」おもしろいと思ったのかを具体的にしていく、という仕事なんです。

上原さんが「おもしろいにもいろいろある」というお話をしてくれましたが、いま参加してくれている人たちに自分の好きなゲームのなにがおもしろいか聞いてみたいと思います。

マインクラフトが好きで、自由に建築できたり冒険できるところがおもしろいです。

ぼくもマインクラフトが好きで、組み合わせて作っていくのがおもしろいです。

同じマインクラフトでも、なにをおもしろいと感じるのかは人それぞれ違いますね。

その気持ちに正解・不正解はないと思います。それをどう人に伝えて、共感してもらうかが大事なのです。

※マインクラフトとは、ブロックで作られた世界で、自由に建物を建設したり冒険したりできるゲーム。オンラインで世界中のプレイヤーとつながりゲームの世界で協力しあうこともできます。学習素材としての評価も高く、2023年現在で歴代で最も売れたゲームと言われているほど世界的に人気のゲームです。

ゲームプランナーのお仕事をチラ見せ!

たくさんの人が関わって作っているゲーム。具体的にはどのように完成に向かっていくのでしょうか。今回は特別に実際の企画書の一部をご紹介いただきました。

今日は実際の企画書の一部をご紹介したいと思います(画像)。

こちらは、「合体するゲームを作りたい!」と思ってつくったフランケンシュタインが登場するゲームです。

合体するゲーム!?

ヒーローが登場するゲームでは、合体して強くなっていくというのはよくありますよね。僕はそういうのが大好きで、突き詰めて考えていったらフランケンシュタインになっちゃったんですよ。

しくみとしては、敵を取り込んで自分の体に合体し、その力を使ってどんどん敵を倒していくというものです。

全体の世界観が固まったら、細かく設定を作りこんでいきます(画像)。キャラクターの役割や、どういうアクションをするかなどを決める作業ですね。

ジャンプする、攻撃する、登るといった普段の生活で自然に行っていることでも、ゲームだと全てプログラムで作る必要があります。そういったキャラクターの基本行動を全てリストにしていきます。

企画を考えるために、上原さんが大切にしている視点は?

次々に生み出される革新的なゲーム。その原点となる最初の発想は、いったいどうやって生まれてくるのでしょうか。上原さんのアイディアを生み出す力を探ります。

上原さんの企画や設定の発想はどこからくるのかすごく気になります。

ぼくが大切にしているのは、「なんで?」と疑問に思う感覚です。

おもしろいと感じるものは人によってバラバラですよね。なので、立ち止まって「なんでおもしろいと思ったんだろう」ということを考えてみるということです。その逆もあって、好きじゃないと感じるものがあった時も「なんで?」と考える。

常に自分の感情に素直に向き合っているということですね。

そして「なんで?」と考えるのは、ゲームや映画のようなエンターテイメントだけではありません。

例えばこのスライド(画像)をみてください。

ここに現在エレベーターが停まっている階数が表示されています。エレベーターがどの階に停まっていても待っている人からするとあまり関係ないのに、なんであるのかなって気になってしまうんですよ。

それは正解を知りたいというより、エレベーターを作った人がなにを意図して作ったのかが気になってしまうということですね。

そういう身の回りにあるものに対する「なんで?」と疑問に思う感覚を大事にしているんですね。

それでは、いま参加してくれている人たちにも身の回りのもので「なんであるの?」と思う不思議なものを発見してもらいましょう!

太陽はなんであるんだろう?

乳歯!

おもしろいですね。

ぼくが「なんで?」と疑問に感じてそれについて考えるのは、人に伝えるためなんですよ。

ゲームはたくさんの人を巻き込んで作っていきます。でも、おもしろいと感じるものは人それぞれですよね。だからこそ、関わる人たちに自分が感じているおもしろさの理由をきちんと説明しなければならない。そのために、普段から自分が感じた感情や感覚に理屈をつけて説明するようにしているんです。

人に伝えるには、自分の「おもしろい!」という感覚に自信をもつことも大事です。

ゲームをつくるプロになるために、いま大切にして欲しいこと

上原さんのようにゲームをつくるプロになるには、どんな力が必要なのでしょうか。算数?プログラミング力?ゲームセンス?…全ての子どもたちに将来に向けて今、大切にして欲しいことを教えていただきました。

どうしたらゲームプランナーになれるのか、いま参加してくれている人たちが一番気になるところだと思います。

上原さんは、どうやってゲームをつくるプロになっていったんですか?

僕の兄がSEGAでゲームを作っていて、その影響もありずっとゲームで遊んでいました。しかも、冒頭でご紹介した「いただきストリート」のボードゲーム開発メンバーが兄の友人という幸運もありました。

「いただきストリート」が大好きだったのでゲームの細かいところまで知り尽くしてしまい、その友人に「なぜこうなんだ!」「自分だったこうするのに!」と言い続けていたんですね。そうしたら、そこまで言うなら会社で手伝ってみる?と誘ってくれました。

確かにゲームで遊ぶ時、「こうだったらもっとおもしろいのに」と思うことはありますよね。

ぼくは思うだけじゃなくて、とにかく言葉にして伝えたかったんです。

その結果、ゲーム会社に辿り着いてしまったということですね。

はい、そこから気がついたら25年くらい経ちました。

僕の場合誘われて会社でゲームを作ることになりましたが、今日参加しているみなさんはもう独自でゲームを作れる環境にあるんですよね。

いま参加してくれている人たちも、自分でゲームを作ったことがあるという人がたくさんいます!将来、上原さんと一緒にゲームを作っているかもしれないですね。

そうなってくれることを考えると、すごく楽しみですね!

夢が広がりますね!上原さん自身のこれからの夢はなんですか?

ゲームを作り続けたいです。もっといろんな人に遊んで欲しいです。

もう一つの夢は、エンターテイメントの枠を超えてゲーム技術をもっと広い分野で活用することです。たとえば、外に出られない人に対して擬似的に旅行の体験をしてもらうということは、ゲームの技術を使えば結構すぐできたりするんですよ。

ゲームの技術を生かして社会に役立てるような仕事を今日、ここに集まっているみんなと一緒にしてみたいです。

子どもたちが上原さんに聞きたいこと

ゲームプランナーというお仕事に興味津々!どうしたらなれるのかという具体的な質問から、子どもたちの憧れの職業であることが伺えました。一部の質問と上原さんからの回答をご紹介します。

なぜ飽きずにゲームを作り続けてこれたのですか?

自分が考えたものがゲームの画面に出るのがすごく楽しいんですよね。

それから、ゲームは時代によってどんどん姿を変えていくので、次は「どんなことを感じてもらおう」とか「こうしたらおもしろいんじゃないか」ということを考え続けていたら、いつの間にか25年経っていたというのもあります。

ゲームを作る仕事をしていてよかったと思うのはどんな時ですか?

遊んでもらっているのを実感した時です。SNSで感想をみたりもしますし、ゲームセンターで遊んでいる人を目の前でみて、その人がムキになっているのをみた時なんかは最高に楽しいですね(笑)。

ゲーム会社に入るために強みになるポイントはなんですか?

なんでおもしろいかを言葉で説明できることですね。なんでだろうということを自分で考えて言葉にできる力がある人はゲーム業界で活躍できるイメージがあります。

上原さんから子どもたちへメッセージ

最後に、上原さんから参加してくれた全ての子どもたちに向けて、メッセージをいただきました。

ゲームを作るためには、ゲーム以外にもたくさんの知識が必要になります。なので、みんないろんなことを体験して、「なんで?」と考えて、いろいろなことに挑戦して欲しいと思います。

そして、そこで感じた「おもしろい!」という気持ちに自信を持ってほしい

ぼくはずっとゲームを作る世界にいると思うので、一緒にゲーム作りましょう。待っています!

まとめ

「おもしろいと感じるものは人それぞれ」と繰り返し強調していた上原さん。けれども上原さんの作ったゲームには多くの人が熱狂します。

人をワクワクさせるようなゲームをつくるには、まずは自分の「おもしろい!」と感じる気持ちを大切にすること。そこに自信を持つことができれば、言葉にして人に伝えることもできるし、共感を得て巻き込んでいくこともできるのだと教えてくれました。

自分の気持ちに自信を持つことは、子どもだけではなく全ての人が大切にしていきたいですね!

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聞くだけではなく、参加できることを大切にしているプロLIVE。

子どもたちからの質問にプロが直接答えてくれるかもしれないQAコーナーや、プロのお仕事の入り口を体験できるプチワークショップコーナーもあります。

SOZOWのプロLIVE、今後もお楽しみに!

過去のプロLIVE記事は<こちら>をご覧ください。

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(ライター:まつだしなこ)

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